鍵のない夢を見る 辻村深月
短編集でした。
短編集、隙間時間読書になることが多い私には助かる!
軽く読めるのがいいところ♪
本音はどっぷり長編を読みたいのだけど。
グイグイ読み進められたけど、読むごとに自分のどこかをグリグリとえぐられるような気分になった。
前回読んだ、辻村深月本「パッとしない子」でも、似たような感情になったので、辻村深月あるあるなのかな。
自分に余裕がないとき、自信を喪失しているときに読んだら、心がやられそう(笑)
題名に引き寄せられて読んだのがきっかけ。
勝手にミステリー要素のあるものを想像していたけど違いましたね。
理想の世界の入り口は見えているのに、開け方がわからない、わかっていたとしても開けられず、そこにとどまってしまう。
もしくは開けてはいけない世界の入り口を見つけてしまって、開けてはいけないとわかっていてもそちらに行ってしまう・・・
という、理想の自分や、自分はこうであるはずだ!と描いている自分とのひずみが、ゆがんだ形でどんどん広がっていく感じ。
あー!ソッチ行っちゃだめー!でも、自分で選んで進んでいっているわ・・・
短編の話が進むごとに、主人公たちの暴走度も増していって非現実感も増すかと思いきや、取り上げられる題材がどんどん現実的で身近になってくる。
1話目は、転校してきた同級生の母親が泥棒の常習犯で、、、というトンデモ環境の話から始まることで、客観的に読んでいたのが、最後の話ではショッピングセンターにベビーカーで出かけた母子が、数分目を離したすきにわが子がいなくなってしまうという、想像ができすぎてゾッとしてしまうような身近な話で閉められる。
「鍵がない」未来を迎えることがわかっているだけに、題材が身近になってきたり、想像するに難くないものになってくるたび、自分自身に迫ってくるような感じがしてヒリヒリしてくる。
1話目は、泥棒である母をもつ同級生に、気づかないふりをして「あげている」、変わらない態度で接して「あげている」自分。
2話目は、好みではないけど自分に好意を持っていると思われる相手の気持ちに気づきながら、答えることはできないのに「拒まない」自分。
自分のことを想ったうえで起こしているであろう言動は、しっかりと見届ける優越感。
3話目は、友達により少しでも進んだ恋愛、明るい未来を誇示するために、相手は二の次、さらにはダメな相手だとわかったうえでも、身内への優越感を手放せない自分。
4話目は、非現実的な夢を見続けるダメな相手に、いつまでも翻弄され、つきはなすことなく、そこに自分の居場所を感じてしまっているような自分。
最終話では、満足に睡眠もできず、周りからのサポートや理解が浅い中、ひとりで子育てに向き合い、わが子を愛する故に、逃げ場をなくしている自分。
話が進むにつれ、合わせてあげる自分、支えてあげる自分、そのために無理をしている、苦しい日々を送っている自分にどこか満足しているようだ。
だから、彼らは鍵を開けない。
開けたら、自分の存在がなくなってしまうような気がするのだろうか。。。
話の展開もだけど、登場人物たちの内心秘めこんでいる自意識の高さや、自己評価の高さ、甘い未来の展開への期待、それを受けての他人の評価や反応がジリジリとグリグリと。
やめてくれ。
私の過去を含めての失言やダメな行動の記憶を呼び起こさないでくれ。
私の狡さや存在の中途半端さを解説しないでくれ。
つらかった過去、痛かった周りからの言葉を思い出させないで~。
と、後半読み進めるのがしんどかった。
でも、止められないし、最後まで見届けなければと思って全員がカギを開けられなかったのを見守りました。
読んで、すごく疲れた。
でも、やめられない。
きっと、私はまた辻村深月本を手に取ってしまうであろう。。。
読んでも罪悪感や、責められた気分にならないクリアな心の持ち主になりたい。。
おもしろさ★★★☆☆ 飽きずに次から次へ読めた。
暗さ★★★☆☆ 短編だから重々しさを感じにくく次の話に移るけど、展開的にはどれも明るくない
ミステリー度★★☆☆☆ ミステリー本、ではない。けど殺人事件は起きる。
心理描写度★★★★☆ おもてには出さない人の黒め、暗めな心理が描かれている。理解しがたいほどの真っ黒ではないところが、妙にリアル